●ドアラくん
たまに出かけると世の中の人ってどうしてこんなに親切なのかしら。と嬉しくなっちゃう。
地下鉄に乗り込むと、座っている若者が「あっ」という顔をしてわたしに席を譲ってくれる。別に杖をついているわけじゃないのにねえ。
いつもの洋食屋さんで一人でご飯を食べていると、知らない人が「せっかくですから」と、わたしの分も支払ってくれる。
全然記憶に無いのに「前にも来ていましたよね。今度はいつ来るんですか?」と声をかけてくれる人もいる。
たまに行く近所のケーキ屋さんで二個だけ買うとおまけにケーキを六個くれて、スタンプカードを倍押してくれて「また来ていただきたいんです」と言われる。
あ、これ全部色気抜きの親切なのよ。
わたしの美貌にくらくらしたアラブの富豪が「あちらのお嬢さんにシャンパンを」とオーダーして「東洋の真珠に乾杯」とか(これはハーレクインロマンス)シャルル・ドゴール空港ですれ違った有名作家が「やっと出会えたね」と声をかけてくる(これは辻仁成と中山美穂の出会いね)とは全く別物ね。当たり前だけど。
我が人生、今より若かった時にもつまり今よりずっと痩せて白髪もたるみもなかった頃にもこんなことはなかったのにどうしてなんだろう。世の中の仕組みが変わったのだろうか。
家に戻って壮二郎に
「いやああ、みんな親切だわあ。今日もね…」と自慢する。だって他に言う相手いないんだもん。
壮二郎が苦々しい顔をして「ドアラくん可愛い!ってみんな面白がっているんだけれど、ドアラくんとチーム組んで野球している僕の気持ちはわからないよ」と言う。
なにそれドアラくんって、わたし全然わかんないそれ。
へえ。ドアラくんって、コアラの顔した中日ドラゴンズのマスコットキャラなんだって。フン、そんなの知らないもん。野球興味ないもんね。
「ドアラくんはバク転とか出来るんだった。ちょっと違うな。じゃあね、わらぶき屋根の家を見て、わー!珍しい。って喜んでいる人を見て、フン!ここに住んでいるんですけど。っていう気分だね」
あ、それならわかるー!見るだけなら面白いけれど実際住んだら隙間風ははいるし水洗トイレにもできない不便な家なんだよ!っていう気持ちね!とアハハ壮ちゃん例えが上手ねえ。と喜んだんだけれども喜んでいる場合じゃないかも。
面白キャラと暮し続ける。更には自営業まで一緒にするという苦労をしているのね。
頑張れ!苦労はいつか実るっていうからね。
●ピッピたん
殆ど家の中にいて、南インド屋の発送作業をしているの。間違いが多くて大変よ。数え間違いに入れ忘れ。発送したあとの間違え訂正に電話をして謝っているついでに「え、リモートワーク中なの?かっこいいわねえ。わたしリモートワークしている人と話すの初めてかも」なんてペラペラ喋って、その後twitterで「南インド屋のおばちゃんと電話で20分も喋っちゃったよ」と呟かれてちょっと恥ずかしい気持ちになる。20分も何喋ったんだろう。憶えてないわよ。
仕事の合間に庭に来る雀のピッピたんを愛でる幸せよ。今では大枚はたいて(と言っても600円)Amazonで野鳥の餌を購入しているんだからね。投資しているんだからね。
雀その他(美人の四十雀は美人ピッピたん、声が綺麗なカワラヒワはヒワたん)も今は子育ての時期で一年で一番楽しい時期なのよ。あ、楽しいのは見ているわたしで親鳥ピッピたんは子育てに疲れて痩せたうなじが痛々しい。
赤ちゃんピッピたんが黄色い口を開けて羽をびゃーーーっと羽ばたかせて親鳥に餌くれアピールをする姿を観るとわたしの血圧も急上昇よ。物陰に隠れて(ピッピたんに見つからないように)一緒にびゃーーーっと叫ぶ。
操の観察日記によると(誰か読みたい人いる?)親1子1のひとりっこピッピたんの場合は赤ちゃんピッピたんも親鳥ピッピたんもじっくりと子育てをしているのだけれどもこれが親鳥1子2の双子ピッピたんになると親鳥の顔色が蒼ざめる。ような気がする。ま、茶色なんだけどね。双子もびゃーっの羽ばたきが強くなって二羽で親鳥を追い詰めたり諦めて自分で餌を食べる場合もある(自分で食べられるなら親を頼るなよ。と思う)
最近は親1子3の子だくさんピッピたんもいてこれはもう争い。ライバルがいると赤ちゃんピッピたんも気が荒いのよ。赤ちゃん同志で威嚇しあったり上に乗っかったりして「ああ兄弟が多いと闘争心が強くなるのねえ」とこれはもうひとりっこピッピたん家族の穏やかさとは違う種族か?とも思う。見かねたカワラヒワのヒワたんが赤ちゃんピッピたんに餌をやっている姿も見たわよ。隣人愛?鳥だけど。
ああ、わたしも子育ての頃にはとろいわたしのことを見かねた周りの人(つまりヒワたん)に随分助けて貰ったわよねえ。と過ぎし日の自分に重ねてしみじみするわけ。
お世話になったあの頃の皆さんにお礼が出来ないのでせめてもの償いで餌を蒔いているわけよ。届け!操の感謝の心!