●お呼びじゃない?
高校生の時、母の亀子(仮名)とクラスの男子の噂話をする。
「伊藤くんって目がパッチリした女の子が好きなんだって」
「え、、、」
「ヒロシは明るい女の子がいいって言ってた」
「そうなの~」
「木下くんは知的で痩せたヒトと付き合いたいんだってさ」
「フン!」
亀子がいちいち自分に当てはめて照れたり機嫌を悪くしたりするのを
「何だかヘンだな」
と、思っていた。
たまに「こいつは将来ホストになるな」と思われるワルいのが
「オバサンこんにちは。いつもキレイですね」
なんて言うと
「今度横山くんはいつ来るの?」
とうるさい。
久しぶりに会った同級生の恵子ちゃんのお嬢さんが彼と別れたばかりなの?
え、壮二郎恋人募集中だよ。どう?いいんじゃない?
「僕は読書が好きで、テレビを観ないヒトがいいな。スパイス好きだと尚嬉しいな。」と早速壮二郎が好みのタイプを言うと
「え、わたしテレビっ子なんだよね、本も読まないし…辛いもの苦手。」
誰も恵子ちゃんのこと聞いてないって。
みんな、図々しくない?
「好みのタイプ」の話になると年齢も既婚未婚も顧みずに真っ先に自分を当てはめるって女のサガか?
気を付けなくちゃねえ、なんて言いつつ思い出した。
恥ずかしいけど書くわ。
若き日の皇太子が誕生日の記者会見で「理想の女性」について
「ティファニーであれこれ買い物する方は困る」
と発言なさったのを聞き、あの頃誰でも持っていたティファニーのオープンハートのペンダントを思い出して
「あら、わたしダメだわ」と思った!
確かに思った!
オープンハート持っているからお妃様になれないって思った!
一番図々しいのはわたしでした!
●え、こんなにお爺さんなの?
彼は杖をついて、よたよたしている。年齢も身の上も正々堂々とおじいさんなのに通りかかったご婦人に
「おばあちゃん、駅はどっちだい」
なんて聞く。あとで
「今のヒトあなたより若いわよ」ってこっそり注意すると
「ええええ!俺ってそんなにお爺さんなの?」
と、驚愕した。
ついでに一緒にエスカレーターに乗っていると鏡に映った自分を見て
「ええええ!俺ってこんなに太っているの?」
と、驚愕した。
バカだなあ。と思ったけれどヒトのことは言えない。
亡くなったわたしのオバサンの口癖は
「若くなりたいなあ、せめてあと60くらい若くなりたい」
だった。
それを言うとみんなが必ず笑うんでオバサンも満足そうだったのだけれどね。
今ならわかる。
あれ本気だったのよ。
わたしもあと40くらい若くなって、20キロくらい体重減らして、しかもこの老獪な心で暮らしてみたいと思うもん。