●アレ
今年になってから、スパイス販売とインドでの料理教室開催、そして二回上京までして、もう記憶は殆ど枯れ野原。
どんなことがあったのか殆ど憶えていないわ。
元号変わったのがこのあいだ。
あ、これ昭和から平成になった時のことね。
で、平成から令和になったのもこのあいだ。
万能の言葉ね。このあいだ。
でも、こんなわたしが使わないように気をつけている言葉があるのよ。
「アレ」
10年くらい前に同年代の知人が
「つまりアレなのよ」
「あの人ってアレよね」
を多用するようになったの。
その時はストレートな表現を避けたつまりアレよ、オブラートに包んだ表現かな。と解釈したのだけれどね。
違ったみたいで、
だんだん「アレ」の登場回数が増えてきた。
その人が
「アレがアレしたのよ」
と、語るようになった頃には引っ越して会うこともなくなったから、その人がいま「アレ」をどれくらい多用しているかはわからない。
言葉が出て来ないのよ。56歳にもなると。
ああ、なんだっけ、アレよアレ。と口走しりそうになるのだけれど、そのアレが何だったか思い出すまで粘ることにしているの。
お喋りなわたしが絶句したら
「あ、操ちゃんはいまアレが何か必死で検索しているんだな」
って暖かく見守ってね。
少ない脳味噌の少ないシナプスを必死で繋げているのよ。
喉をかきむしるくらい足掻いているところなのよ。
●忙しいの
数少ない友達が
「操ちゃん、お茶しようよ。ヒマなんでしょ。」
と、声をかけてくれるのだけれど
いやあ、意外と忙しいのよね。
と家から出るのを渋ってしまう。
何をして忙しいのかというと
スパイス販売の作業なのだけれど
袋詰めと発送はかなり慣れてきたから当初ほどてんてこ舞いにはなっていない。
んじゃ、何しているの?
と、言うとね。
発売当初はスマートレターに手書きで住所を書いていたのだけれど、クリックポストというのに変更してからは、壮二郎が住所を印刷してまとめて買った発送用の袋に貼るだけになってとても楽になったのよ。
本当は「南インド屋」のマークを入れた専用の包装箱を作りたかったけれどもすんごく高くつくので、天才だから閃いたわけ。
あのくるんと巻く紙を印刷しているのだけれど、一緒に壮二郎の顔を描いたのも印刷したわけ。
それを切って、裏に両面テープを貼って、ヒトこまずつ切って、袋に貼るという七面倒くさい作業をしているの。
これで専用袋を作ったみたいに見える!
つまり新築そっくりさん状態というのかしら。
ハズキルーペをかけて、紙を細長く裁断。
ぶるぶる震える手先で(アル中ではない。不器用なだけ)両面テープを貼る。
それを切って、袋に一枚一枚貼り付ける。
書くと簡単だけれども、すんごく時間がかかる。
リラの花咲く6月に部屋に籠って延々と続けているの。
時々、何でこんなことをしているのか?と正気に返る瞬間があるけれども
きっとこの袋を見て
「わ、可愛い」
と思ってくれる女の子や元女の子がいると信じているわけよ。
●間違えちゃった
わたしのことを
「メンタル強いよね」
って言ってくれる人が多いのだけれど、この強さにはワケがあるのよ。
そ、日常的に失敗をしているので、いちいち落ち込んでいたら一日中しょんぼりしていなければならないんだもん。
昨日も地下鉄で、長太郎の友達に会った。
気がした。
だから声をかけた。
「久しぶり!札幌に戻ったの?ムラヤマくん!」
って。
そうよ。人違い。偽物よ!紛らわしいったらないわよ。
わたしの頭の中では中学生のあの子が32歳になったらこんな感じだ!とピンと来たのだけれどね。
声かけられて戸惑っている偽ムラヤマくん。
わたしだって戸惑ったもんね。
壮二郎がぽつんと
「壮ちゃん可哀そう」
と、呟いた。
お願い!わたしのこと見捨てないで!
今日は流石に凹んだわ。
「南インド屋」の商品を包んでいるあの緑色の紙ね。
残り少なくなったので、発注したの。
仕事速い!
いつも残り少なくなって慌てるから今回は大量に発注したの。
A4とA5を間違えちゃったよ。
こんな大きいのどうやって使うの。
元々ちょっと気持ち悪い画風だから大きくなるとさらに気持ち悪いのよね。
でもね、息子の顔が描いてあるから捨てるわけにもいかないしなあ。
壮二郎にはまだ秘密。
きっと
「壮ちゃん可哀そう」
って言うよね。
フン!
棺に敷き詰めてもらうからいいもん。