●身体の周りにある粒々
知人をみかけたの。
年上のオバサンに囲まれてコーヒーを飲んでいるところを見たわけ。
仲が良さそうなわけでもない団体。
知人はオバサン達をおもてなししているような、へりくだっているような。
でもなんだか上から目線みたいな。
ん？
何かヘンだ。
なんだろこれ、この違和感。
自分の心に聞いてみる。
つまり、よろしくないモノを売っている人みたいな感じ。
相手を騙そうとしているハラハラ感。
あとから知ったのだけれど、怪しい健康食品を怪しい容れ物にいれて、高額で売り始めたんだって。
2年くらい前には、木綿の服に麻のストール巻いて足袋ソックスを履いてゆったりと暮らしているような人だった。
みんな大好きな「丁寧な暮らし」とか「スタバでほうじ茶ラテを飲んでほっこり」とか「手書きのカードにメッセージ」
みたいな感じだったのになあ。
服装もヘアスタイルも変わらないのだけれど、その人の周りにある「粒々」が怪しくなっていた。
きっと人はみんな自分の周りに粒々があって、語らなくても、動かなくてもその粒々の情報でその人の中身がわかるのだろうか。
わたしは霊能者になったのだろうか。
いやあ、きっとみんなわかることなのよね。
言葉や態度以前に、その人の周りの粒々が先に情報を発信しているんだと思うの。
その粒々はきっと最近のことも昔のことも、もーっと以前の生まれる前の大昔のことも情報として含まれているんだと思うの。
そしてそれは人だけじゃなくて、場所やモノにもあるのだと思う。
随分前、南フランスのマルセイユで観光船に乗ったの。
ナポレオンの生まれたコルシカ島まで行くクルーズ。
フランス語でガイドが説明してくれるのを、フランスに嫁いだ友達が翻訳して教えてくれていたの。
ある場所に行った時に、フランス語の説明が始まる前に
「あ、ここはサン・テグジュペリが亡くなった場所だ！」
ってわかったの。
その後にフランス語の説明があって、続いて日本語で友人が翻訳してくれたの。
墜落現場とされている場所だったのよ。
わたしはサン・テグジュペリの熱心なファンではないので、この地域で彼が行方不明になったことも知らなかったし、サン・テグジュペリの魂が日本からのんびり観光に来たオバサンに
「ヘイ、ミサオ！僕はここで亡くなったんだよ」
と教えてくれるわけもないのよ。
あれはきっとね、毎日毎日観光客がフランス語で
「ここでサン・デクジュペリの飛行機が発見されたんだー」
と思った粒々が濃く残っているからわたしが言語の壁を越えて拾ったんだと思うのよ。
こんなこともあったなあ。
ある年の12月30日の夜から頭の中を大瀧詠一の歌がエンドレスで鳴り始めたの。
あ、特にファンってわけじゃないの。青春時代によく聴いたけどね。
止まらないの。
ヒー！誰か止めてーーー！っていうくらい。
その後で知ったのよ。
その日急死したって。
でもねえ、大瀧詠一が一面識も無い、熱心なファンでもないわたしに
「ミサオ、今日僕は天国に行くよ。最後に君のためにロングバケーションをノンストップで歌うよ」
と天国に向かうお忙しい時に力を振り絞って歌ってくれるとは思えないのよ。
あれはきっと近親者及び熱いファンの皆さんが
「大滝詠一、あなたのことは忘れない」
と大合唱した粒々が北海道まで飛んで来たのだと思うの。
こんな感じのことはよくあるの。
林隆三さんが亡くなった時、大原麗子さん、渡瀬恒彦さん。その他忘れちゃうくらいいっぱい。
わたしのこの粒々を感じる能力とも言えない感覚の特筆するべき点はね。
なーーんの役にも立たない！ってこと！
●粒々のお知らせ
これはちょっと気持ち悪かった。
20年以上前のこと。
新しいスケジュール帳をじっと見ていると、ある日付だけが何故か濃くなっているの。
何故だろう。この日に何かあるのかな。と、そっとそこに丸印をつけて忘れていたの。
その当日になって
「何にもなかったじゃん」
とお風呂に入ろうとしたら親戚の危篤の知らせが来たの。
湯船に浸かっちゃって、ぼーっとしていたら
洋服のボタンがパーンと弾け飛んだ感覚があって
「あ、いま亡くなった」
ってわかっちゃったの。
お風呂の時計で時間を確認しておいたのだけれどね、やっぱりその時刻に亡くなっていた。
ちなみにその方は血縁関係ではなくて２回しか会っていないの。
義理の仲っていうのよね。
亡くなる時にわたしにお別れを言うエネルギーがあったら他に行ってるよね。
でもこれはちょっと怖かったのでそれ以降スケジュール帳を眺めるのは止めたの。
だって
「あー！この日わたしが死ぬんだー！」
ってわかったら嫌だもん。
でもね、最愛の父が亡くなった時には何も知らずに寝ていたし
最愛の恋人が亡くなった時だって元気いっぱい働いていたわよ。
何の役にも立たないのよー！
