●しょうもない買い物
若い頃はデパートが大好きだったの。
一階の化粧品売り場には綺麗なお姉さんがいっぱいいて、美しい売り場にある花園みたいな口紅やマニキュアを見ては
大人になったら、お金持ちになったら
「ここからここまで全部ください」
って言おうと夢見たものだったわ。
2階の靴売り場に行けば自分がシンデレラもしくはイメルダになってしまい
「王子様に片方置いていくのはどの靴がいいかな」
と、妄想に浸った。
大人にはなったけれどお金持ちにはならなかった。
上手く出来たもので、いつのまにか地下の食品売り場のお菓子コーナーにしか興味がないオバサンになって
ああ、そして遂にそれさえも面倒になって
札幌にいる時には六花亭、上京したらトップスのチョコケーキと銀座ウエストのサブレストのコーナーに真っ直ぐに行くだけ。
そうなのよね。齢とったのよね。
もうデパートの魔術にはひっからなくなったのよ。
デパートもわたしに来てほしくないのよね。フン!
でもね、急に欲しいものができちゃったのよ。
これよこれ。
https://5hon-yubi.net/shopdetail/000000000858/
みなさんご存知の通り、わたしはもわもわ頭なのよ。あ、もやもや病じゃないからね!
髪の毛がもわもわなんだからね!
でね、寝る時にそのもわもわが肌にちくちくして、むずむずして寝にくいのよ。
わたしのこの気持ちはサイババと子どもの頃のマイケルジャクソンはわかってくれるはずよ。(あ、二人とも物故者だわ)
わたし見かけ倒しで肌が弱いのよ。シーツも枕カバーも素材にとても気を遣っているのに、このもわもわのせいで台無しなんだもんね。
そんな時にこれを見つけたわけよ!
ね!いいでしょ!
ゴールデンシルクのナイトキャップよ!
これさえ被ればもわもわが気にならずにぐっすり眠れて、しかもシルクの効果で髪も肌も艶々になるのよ!
そうよ、今日からわたしは繭子で絹子で艶子よーーー!
童話の女の子が被っていたみたいなナイトキャップを使って、八島操57歳が若返る日が来たのよ!
届いたらもう夜を待てなくて早速被ったんだけどね、なんだか違うのよ。
写真では大きなフリルで顔が隠れて、ゆったりとしているのに、わたしが被ると串団子の実演販売のオジサンみたいなの。
しかもけっこうゴムがきつくて、被っていると頭が痛くなる。
これはモデルの女の子とわたしの顔の大きさが違うからなのかしら。
いや、被っているうちにゴムは伸びるはず。
痛いなんて気のせいよ!
これはわたしが艶子に変身するのを妨害する闇の勢力のトラップに決まってる!
夜を待ちかねてホイホイとベッドにはいったわよ。
だって「みさおとゴールデンシルクの奏でる美しき睡眠の時」だもん。
でもね、ワクワクとしめつけ感で眠れないの。
正直なところ「みさおを艶子に変身させる美しきゴールデンシルクのナイトキャップ」がなければ眠れるとわかってはいるのだけれど、
美への執念と商品代金1890円(税込み)のモトをとるための執着がそれを拒むのよ。
ベッドの上でごろんごろん寝がえりを打ち続けて、でも朝になったら爽やかに目が覚めたわよ。
うにゃーっと伸びをして枕元を見ると
あら、こ、こんな場所にわたしショーツを脱ぎ捨てている。
え?え?ええええええ?
何故?も、もしかして身持ちが堅いことで有名な八島操57歳がついうっかり夜這いの若者と過ちを犯したの?
北海道にそんな風習あったっけ?
と、とても驚いたんだけどね。
よく見たら無意識にゴールデンシルクナイトキャップを脱ぎ棄ててあったのをショーツと見間違えたのよ。
ああびっくりした。
もうね、これいらないよ。
誰か欲しい?
(一晩使用していますので、中古ということにご理解のある方。神経質な方はご遠慮ください)