子どもの頃は、ヒデキやひろみにキャーキャー言っていたから。
勿論「ムード歌謡」なんて眼中になかった。
オジサンが艶々で真っ黒の髪を7・3にして並んでいてすっごくかっこ悪い。
ヒデキみたいな狼カットのヘアスタイルがカッコよかったのよ。
キャーッ!ヒデキ!エキサイティングヒデキ!
そんなわたしがいま、毎日毎日鼻歌で歌っているのが
「コモエスタ赤坂」
55歳になると歌の好みも変わるんだな。
「好きなの?」
と聞かれたら
「いやあ、そうでもないような・・・」
と答えちゃうんだけど、とにかく頭の中がムード歌謡だらけ。
我が人生55年、ムード歌謡的な出来事はひとつも起こらなかった。
「大人になったら自然と好きになるものなのかな?」と思っていた夜の街のネオンも赤ちょうちんも全く縁が無かった。
今まで無いのだからこれからも無いだろう。
今日から日本が禁酒法の国になってもいい。
人間が一生に摂取できる水分量が決まっているのならば、わたしは水割りやブランデーじゃなくてコーヒーやチャイを飲みたいんだもの。
あ、そうだ。一度経験したかったことがあるの。
シャンデリアが煌くホストクラブで
「奥様お手をどうぞ」
とデカ襟ワイシャツ太ネクタイのホストとダンスをしてみたかったの。
そしてね、耳元で
「奥様はまるでお嬢さんのようですね」
と。囁かれたかったのよねえ。
わたしはこれからホストクラブにいける「奥様」になる予定は全く無いし、第一最近の若いあんちゃんホストには全く興味無いのよ。
あくまでジェントルマンなおじさまホストがいいの。
いないよね。
もう全員引退しちゃったよね。
あとね、もうひとつ叶えたい願いがあるんだけどなあ。
ねえねえ、神様!これならば可能かもしれない。
あのね、「中条きよしの京呉服お見立て会」に行きたいの。
「奥様にはこれがお似合いです」ってバカ高い反物勧められてうっかり買いたいのよ。
うっかり買うってとこがポイントなの。
国籍不明なこの顔に似合う京呉服があるのか?
きよしならわたしに何を勧めてくれる?
だいたい2018年秋の日本で「中条きよし京呉服お見立て会」はあるのか?
そして一体わたしは京呉服が欲しいのか?
「コモエスタ赤坂」を歌っていると、脳が沸いてきてある種の魔界に踏み込みそうになるんだな。
きっと魔界の方でもわたしが行くと迷惑だろうな。とは思うんだけどね。