みさ日記「有名人に会った?」「海○○さん」

●有名人に会った?

田舎の子どもだったから、トーキョーへの憧れが強かった。

ああ、わたしも東京の女の子になって、大磯ロングビーチのスター水泳大会を観に行ったり、渋谷公会堂でスターの出待ちをしてみたいものだと思ったわよ。

だから自分がオバサンになってからも、息子たちが東京に行って戻ると最初に聞くことは

「誰か有名人に会った?」

だったの。

そうよ。田舎っぺ丸出しよ。

いいの。

自分が東京に行く前の晩には神様にお願いしたわよ。

「神様、どうかわたしでもはっきり認識できる有名人に会えますように」

ってね。

そう。顔認識能力が低いので

「はっきり認識できる」有名人じゃなくちゃ困るのよ。

東京大丸デパートの前で、身体にピッタリしたピンクのスーツを着た茶色の巻き髪のオバサンが、ペットボトルの緑茶を手に人待ち顔だった。

よく見ると、五月みどりさんだった。

なるほど、わたしでもわかる有名人だけれども、喜びが湧いてくるほどではなかった。

次に上京する時には

「神様、もう少し旬な有名人をお願いします」

と、祈った。

ホントくだらないことで祈らないでよね。って信心深い人は思うでしょ。

いいの。

「みさおの神様」なんだから、くだらないことが好きなはずだもんね。

次の上京の帰りのANAの乗りこむ時に、最前列の金持ちシートに

「小柄、色黒、目がきょろん」とした男性がカノジョと思われるマスクをした女性と乗っていた。

明らかに

「あ、オレのことわかる?」ってオーラを出して周りをちらちら見ている。

ああ、これは有名人なんだなあとはわかったのだけれど、なんたって顔認識の引き出しがごちゃごちゃなわたし。

フライトの間中

「小柄、色黒、目がきょろん」

の男性有名人を検索してやっとヒットした。

あ、長友選手じゃん!

カノジョと札幌旅行だからキョロキョロしていたんだー。

大丈夫よ、わたしはこっそり写真を撮って文春に売ったりしないからね。お幸せにね。

 

千歳空港に着いて、ターンテーブルに行くと彼が大きな荷物を受け取っていた。

カノジョとそそくさと出て行くその後ろ姿を観ながら近くのオバサン二人が

「意外と小柄だわねえ」

と噂話をしているので、全く人見知りをしないわたしも参加した。

「ですよね、もう少し背が高いかと思ったわあ」

「マスクしていてもわかるわよねえ」

え、マスクしているのはカノジョじゃん。

ん?

んん?

オバサンたちがわたしを蔑むように言った。

「あのマスクしていた女性がフィギュアスケーターの〇〇さんでしょ」

ああスミマセンでした。

ではわたしが長友選手と勝手に思い込んだのは、マネージャーさんでしたか。

●海〇〇さん

もう有名人に会うのは諦めた。

だって誰を見ても見分けがつかないんだもん。

もういいよ。神様。

テレビも見ないから最近の有名人情報更新されていないしね。

と、思っていたら。

また帰りのANAの金持ちシートに小柄で坊主頭にマスクの男性が座っていた。

 

ぬぬぬぬぬ。

これはわたしでもわかる。

日本人の90%はわかるんじゃないかな。

私生活での騒ぎや、日本中の紅涙を絞る出来事はテレビを観ないわたしでも知っている。

こんな遅い時間に札幌に行くんだー。

忙しいんだね。頑張ってね。

 

千歳に着いてJRに乗ったら、向かいの席に彼がいた。

 

あら。

指定席を取らないなんて意外と庶民派ね。

でもキャリーバッグの取っ手を上げてうまい具合に顔を隠している。

さすがマスコミに追われ慣れている人は違うよね。

大丈夫。

隠し撮りして文春に売ったりしないわよ。

へー。

思っていたよりも若々しい。

スマホをせっせといじっているのは、ブログ更新してるのかな。

北海道に着きました。みたいな。

脹脛がパツパツのグレーのズボン。

綿の薄手のセーター。鍛えた胸筋が露わになっているわ。

視力の良さを生かして手相を観察したわよ。老眼だけど遠くは見えるのよ!

ふむふむ。結婚線が二本あるわよ。

と、いうことは次もあるわね。

あらー薬指に結婚指輪。

まだ奥様との結婚指輪をしているなんて、みさちゃんちょっと泣けちゃうわよ。

そんなにすぐに忘れられないわよね。

そうよね。

わかる!

わかるわよーー!

 

そう。たまたま向かいに座ったご縁だわよ。

海〇〇さんにこれから良いことがいっぱいありますように。

お子さんがすくすくと育ちますように。

天国にいる奥様もあなたを見守っているわよね。

とこっそり祈った。

日本の伝統芸を背負う方なのよね。応援しているわ。

 

みんな!わたしのことを博愛の人と呼んでね。

こっそりと相手の幸せを願う。

陰徳よ。

 

家に戻って、コートを脱ぎながら壮二郎に報告する。

ひゃー。海〇〇に会って、帰りの電車は向かいだったのよー。

思っていたより小柄だったわー。

指輪していたわよ。まだ忘れられないのよね。そうよねー。

と荷物もほどかずにべらべらと喋りながら、海〇〇さんのブログを観ると。

あれ‥‥。

「京都を散歩しています」

ん?

え?

人違い?

 

※その後数時間に渡ってハズキルーペをかけて〇〇さんの画像を解析したのだけれど別人と判明。

決め手はiPhoneのカバーが違うってこと。

ホンモノはリングのついたiPhoneだったのよ!

 

ところでわたしがこっそり祈ったあの人誰?

 

 

 

 

 

 

 

LINEで送る
Pocket