GO!GO!郷ひろみ

いま、我が家でテレビを見るのは、地震や大雨の時のみで、プラグも抜いてある。

ニュースはネットでちらっと見る。

濡れた靴を乾かすには新聞が必要だなと、ずるずる契約していた新聞も止めて10年くらいたつかな。

濡れた靴はポスティングされたチラシの類で乾かしている。

大人の2人暮らしは、靴だってそんなに濡れることはない。

そうそう、それでたまにテレビを見ると、物凄く引き込まれることがあるの。

珍しいのよね。

石原慎太郎氏の記者会見を見た時にも、世の中に触れるのが久しぶりで思わずブログを書いちゃったくらい。

 

それでね、昨日岩盤浴に行ったの。

そこの休憩室にテレビがあってね。見ちゃったのよ。一時間。

目が離せなくなって。

サウナじゃなくて良かったわ。

脱水症状起こすわよ。

 

郷ひろみ特集だったの。

一周まわったとかなんとか言う番組だった。

 

ああ、郷ひろみ。

昭和30年代生まれの女には

「GO!GO!レッツゴー!レッツゴー!ヒロミ!」

の、あの単調なコールが頭のどこかでこっそり鳴り続けているの。

心の屋根裏部屋の中で埃を被ってずっと回り続けるオルゴールを想像してね。

40年以上鳴り続けていたのよ。

「GO!GO!レッツゴー!レッツゴー!ヒロミ!」

キャー!怖いわ。わたしの心の屋根裏部屋。

 

久しぶりに見た郷ひろみは森進一と見分けがつかない。

森進一ほど引きつっていないから郷ひろみだな。って感じ。

一時、眉毛を細くした郷ひろみだったのだけれども、今は不自然なほど濃くなっている。お願い。上手に描いてね。

そうよ、ヒロミは濃い眉毛じゃなくちゃ。

あれ、でもこんな顔だったっけ?

ま、いいわよ。ブサイクで有名な演歌歌手の○○○郎だってかなり直しているんだもん。

 

子どもの頃、顔認識能力が低いわたしはとにかく「目がパッチリしていればかっこいい」という

基準を自分でこしらえた。

だから千葉真一と郷ひろみを好きになることにした。

途中、西城秀樹に浮気をしたわたしのことを郷ひろみは寛大な心で許してくれて、わたしは大人になっても郷ひろみのファンだった。

久しぶりに見るひろみが、下唇をちょっと齧ってから

「いやあ~」っと語り出すのを見て、わたしの心は大きく揺れた。

屋根裏部屋のオルゴールも埃が飛んでちょっと音が大きくなった。

ああ、ひろみがこういう風に下唇嚙んでから語ると、ファンは

胸をきゅーんと震わせたものなのよ。憶えているわよ。あの感じ。

ひな段に座っているわたしくらいの年齢の山田ナントカって女性と、柴田ナントカって女性だけが涙目になってひろみを見ているの。

若い衆には、わたしたち(わたし、山田、柴田)の心の揺れはさっぱりわかんないよね。

アイドルに甘んじることなく努力してきたことを語るひろみ。

そ、ひろみは昔からよう語るの。片岡鶴太郎みたいに語るのよ。

アイドルだけど、自分の意見ははっきり言う。というのの走りだからね。

継承者は木村拓哉よ。

木村拓哉は郷ひろみの唇を齧る部分を、「鼻を鳴らす」に変えたけどね。

 

そう言えばね、氷川きよしが「ずんどこキヨシ!」で手をぱっと広げて腰をくねらすのを初めて見た時に

何故かわたしの心が騒いだの。

な、なんだろう。この胸のトキメキみたいなの・・・・?

そしてこの既視感・・・・?

あれは郷ひろみの、GO!GO!ポーズだったのね。

間違えて好きになりそうだった。ならなかったけど。

つまりわたしの心の屋根裏部屋の、例のあのオルゴールが鳴ったのよね。

そして氷川きよしくんはいつまでたってもGOみたいなナマイキなこと語らないカワイ子ちゃんなんだと思う。

詳しく知らないから予想で言ってるんだけどね。

 

郷ひろみの若さの秘訣を調べるコーナーの私物チェックでは、赤いバーキン(おネエ?)に黄色い財布。

「一応エルメスです。」

って。

若い衆、この「一応」は

「大黒屋で買ったんだけど、保証書ついていたから本物です。」って意味じゃないからね。

昭和では、自慢したいけど、たいしたことないわよお。って時に使ったのよ。一応を。

(例・クルマ?一応BMWだけど)

そしてひろみは黄色い財布はお金が溜まるってことを語り出す。

赤は赤字。青は水に流れる。そして黄色は黄金の色!っていう、もう日本中の人が知っている知識を。

ひろみはきっと

「GO!ひろみなのに生活密着の知識を喋っちゃうなんてカッコいい」を狙ったんだと思うんだけどね。

女性週刊誌の広告にも最近は載らないその知識で「素敵!」と思わせることが出来るのは、時代のド真ん中にいる人だけなのよ。

圧倒的な力技がなくちゃ出来ないのよ。

もうやっちゃダメなの。誰か止めて!

 

更に、庶民的なお菓子、「歌舞伎揚げ」を食べるぞ。GO!

「袋の上から4つに割ってから食べると汚れなくていいんです。」と、語るの。GO!

ここは解説させてね、若い衆。昭和の女の子は

「ひろみって歌舞伎揚げが好き。なんて気取らなくてカワイイよね。しかも食べ方までこだわって、神経質なところも隠さないひろみのそこが好き」ってなったのよ。

山田!柴田!そうよね。

でも今のひろみが言うと、煎餅好きの口うるさい舅。なの。

勿論次の日にイオンで歌舞伎揚げ買ったわよ。

すぐに白二郎に見つかって

「どうしてそんな太るものばかり食べるの?」って厭味言われて、母亀子のところに持っていって二人で食べた。

亀子は秀樹ファンだから、ひろみと歌舞伎揚げの関連については言わないでおいたの。

 

 

10年間会員数が増えているというファンクラブの集い。ってのも見せてくれたんだけど、これほど現金を使わない集いってあるんかいな。ってのがわたしの感想。

場所はホテルなんだけどね、わたしの心の目には(そんなのあるのかと突っ込まないでね)ティッシュペーパーを20枚重ねて真ん中縛ってから広げた薔薇の花の飾り。とか、短冊状に切った色紙を輪にしたものを鎖にしたもの。なんかが見えるの。

実際には無いんだけどね。あるような感じなのよ。

 

全員との2ショット写真(流れ作業)(ひろみと写真を撮る直前に自分チェックのために無造作に置かれた姿見が涙を誘う、デパート10階のセール会場を思い出すうらびれ感よ)

ひろみの歌しりとり(熱いファンでも、物忘れしがちな年代には厳しいかも)

ひろみの歌ビンゴ

ビンゴの勝者には

「ひろみから電話がかかってきて♪どうしてそんなにキレイになるの?」と語ってもらえる。

「ひろみにイヤリングをつけてもらえる」(つけた写真を撮ったらイヤリングは返却)

「ハグしてもらえる」

などの圧倒的に原価率の低い、でもファンには涙の出る商品があるわけ。

会場では「チャリティー」ということでひろみの私物のオークションもあるのよ。

たいしたことのないもがかなりの価格で落札されていた。

デビューの時からずっと好きでいられるアイドルがいるって幸せなオバサン人生だと思うよ。

つまり夢から醒めなかったってことだもん。

羨ましいわよ。

 

わたしはいつひろみの夢から醒めたんだっけ。って記憶を辿ってみた。

あれは20年くらい前かな。

久しぶりに見た歌番組の最後のシーンでひろみが若手の歌手達と並んでいるのを見ちゃったの。

 

明らかに顔が大きく、手足が短い。

 

そうなのよ。若い子は手足が長いの。

昔は並ぶ相手も堺正章や井上順だったからひろみはすらりとした王子様だったのね。

 

 

 

わたしが岩盤浴の汗もすっかり引くほど寒々しい気分になったのは

「ラインはスタンプより絵文字を使います。文章の最後にHIROMIと書くところが、5月中は「O」が「鯉のぼり」の絵文字なんです」

っていう件。

最後に自分の名前をローマ字で書くって、昭和ド真ん中のわたしでも恥ずかしくてできないわよ。

お願い、誰か、誰かひろみを止めてええええええ。

 

 

わたしが田舎の少女だった頃

いつか大磯ロングビーチに行って、スター水泳大会を見たいとか、渋谷公会堂に行って、「ザ・ベストテン」の出待ちをしてみたいとか言う夢があったの。ひろみに会いたかったの。

自分でチケット買ってコンサートに行ったらいいじゃん。って言わないでね。

学校帰りにひろみに会いに行ける都会の少女に強烈に憧れていたのよ。

 

その夢は神様は叶えてくださらなかったのだけれども。

神様って、意外と律儀で、しかも時間の感覚がないような気がするのよ。

大きい声で言います。

「神様、もう大磯ロングビーチにも渋谷公会堂にも行かなくていいです。郷ひろみにも会わなくていいです!」

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