みさ日記●春のみさ祭り(庭編)●春のみさ祭り(室内編)

●春のみさ祭り(庭編)

わが荒れ庭もやっと雪が全部溶けて、スズメのピッピたんが嬉しそうに餌を食べている。

思えばいただきモノのあまりにも不味いミックスナッツをふと庭に撒いてみたら雀が集まって来て始まったわたしと雀のピッピたんの愛の日々。今ではAmazonで「野鳥の撒き餌」を買って撒いている。あの日わたしに不味いナッツをくれたオジサンありがとう。

雀に混ざって時折美人の四十雀が来ると「ああやっぱり生まれついての美人というのは身のこなしから違うのだなあ」と、四十雀の素早いターンにルーマニアの白い妖精コマネチを思い出したり、でもその他大勢のどんくさい雀に自分を重ねて「運動神経が悪くてもコツコツ頑張ろうな」と応援したり。カラスが現れると窓辺に立てかけておいたデジュリドゥをサッと掴んでカラスよけにブーブー鳴らす。ああわたしは毎日部屋から一歩も出ずに、専用庭使用料月額150円の庭を延々と見ているの。何時間でもこうしていられるのよ。

でもねパソコンを開けると「桜満開の画像」がどんどんあがってくる。いいなあ。こちら札幌で桜が咲くのはゴールデンウィークよ。日本の殆どの人が「もう桜は見飽きた。お腹いっぱい」という時期に梅も桃も桜もそろってあわただしく咲いたと思ったらすぐ初夏になる。北海道ってそんなところなのよ。

あ、なんだか心がムズムズするわ。根が生えたように窓際に置いた椅子に座って外を見ていたいはずなのに、心が騒ぐっていうの?本州の桜便りを見るうちにわたしの中に「庭に出て春らしいことをしなければならない」ような切羽詰まった気持ちになってくる。部屋着のまま突然庭に出て闇雲に枯草だらけの庭土にスコップを突き刺す。確か土にスコップを刺すと空気が入って良い畑になると聞いた気がする。10分ほどスコップを乱れ打ちして満足して部屋に戻る。

ん?まだ心がざわざわする。なんだこれ。あ、先月ナントカ農園から取り寄せたニンニクが時期外れなもので全て芽が出ていた。壮二郎に「これ売る方も売る方だけど買う方も買う方だよね」と呆れられていたあれ。

このままじゃゴミになっちゃう!慌ててネットで「ニンニクの栽培方法」をざっとチェックする。ふむふむ。10月に蒔いて雪が解けたら芽が出るっていう設定ね。ではいま芽が出たのを土に埋めればいいじゃん。と、また部屋着のままニンニクをかごにいれて庭に出る。庭土を適当に掘り返してどんどん埋めていく。最初は一つずつ埋めたけれど段々飽きて一昨年パクチー栽培のために力持ちのボブさんに掘って貰った穴に全部植える。というか捨てる。あ、パクチーは一本も生えなかったんだけどね。

バケツにお風呂の残り湯を汲んで部屋の中にぼちゃぼちゃこぼしながら庭にざっぷり撒く。丁寧に埋めたはずのニンニクが水の勢いで全て浮かんでくる。仕方ないので泥水をスコップでかけてニンニクを隠す。隣の庭からの視線を感じる。春休みであずけられているばあばの孫(推定5歳)が物陰から怯えたような顔でわたしを見ている。この孫娘は昨年の夏わたしが庭に出ると「あ、魔女だ!」と大騒ぎしやがったので「どうしてわかったの?」と言って以来わたしを見ると逃げるようになった。ここはやっぱり期待に応えなくちゃと草刈カマを手にして微笑みかける。

散々働いたような気がするのだけれども庭はちょっとも綺麗になっていなくて、餌を食べたいピッピたんたちは「早く部屋に引っ込んでくれよ」という顔でお向かいの屋根で待っている。

壮二郎が「春恒例のみさおの庭仕事だね」と冷たい目で見ている。

●春のみさ祭り(室内編)

働いたような気がするのに全く成果の出ない庭仕事。飽きて投げ出したままのスコップが目障りだわ。

春の訪れのせいか、単に休養充分で力が余っているせいなのか心がそわそわするのよ。なんだろこれ、この気持ち。

ああ、奥の部屋に南インド屋の在庫を効率良く収納するために買った業務用のラックが組み立てるだけで疲れ果てて空のまま放置しているんだったわ、これよこれ、ここを綺麗に片づければわたしの心は落ち着くのね。わたしの背丈ほどある大型ラック二台が奥の部屋を占領しているのだけれど、問題はラックの奥にある積み上げた段ボールよ。ええっと何が入っているんだっけなあ。

ああ、「もったいない本舗」に送ろうと思ってついそのままになっている読まない本。発送用の封筒がひと箱250枚入りのが6箱あるわ。ああ、商品を入れるための透明袋もいっぱいあるわね。

そして女の力では持ち上げられない「ウェットグラインダー」という電動石臼。最近は印刷は外注しているので場所ばかりとって出番のないカラーコピー機。ファミリータイプ、つまり高級感ゼロのマンションに業務用の道具を収納するってことに無理があるのよ。わかってるわよ。

まずはラック二台を部屋からだして、箒で掃除をする。クイックルワイパーで拭いてから雑巾がけの2段方式よ。綺麗好きなのよ!実は!そ、わたしは「単に床を磨く」「単にガラス窓を磨く」は好きなの。問題はものの整理が出来ないの。何をどこにおいて良いのか、どこに何をしまえばよいのかがわからないの。それでも片づけるものを仕分けしてそれぞれの段ボール箱に入れる。いれたそばから何を入れたか忘れるからすぐに布テープに油性マジックで中身を書いて貼り付けるのよ。でもね、貼り付けてホッとしたら今度は油性マジックの蓋が見当たらなくて散々探すの。でね、やっと見つけて蓋をして次の箱に書こうとするともう油性マジックが見当たらないの。そのころには布テープも転がって棚の下に入ってしまいクイックルワイパーの柄を使って長い長い時間をかけて取り出すわけよ。ツライなあ。「みさちゃん頑張れ」とつぶやきながら這いつくばってクイックルワイパーの柄を操作していると自分のやっていることが急に可笑しくなって涙を流して笑ってしまう。

何やってるんだろわたし。どうしてこんなに不器用なんだろう。確かお部屋を綺麗にしようと意気込んだはずなのにちょっとも綺麗になっていない。

昼寝から起きてきた壮二郎が「みさお得意のすごくバタバタ働いて全然片付かないといういつものだね。今日は庭と部屋のダブルヘッダーだったんだね」と言った。

 

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